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菓銘を聞いて「お茶を楽しむ」 -(3)「菓銘」は連想ゲームのヒント- [甘いもの(和菓子・スイーツ・パン)]

♪ 菓銘を聞いて「お茶を楽しむ」 -(2)菓銘を聞いて楽しむ「和菓子」- の続き


茶菓、茶菓子、茶請け、茶の子という言葉があることからもわかる通り、お茶にはお菓子がつきものです。

今年2020年1月15日に名鉄百貨店本店本館9階のバンケットルームで行われた笹屋伊織の女将塾「愛される所作~菜の花色の会」(テーマ:大福茶とお題菓子)において講師の田丸みゆき先生が「大福茶」(おおぶくちゃ)に合わせたお菓子は、「令和の初春」という菓銘の羊羹、梅の干菓子、そして干支の麩焼きせんべいの3種でした。

200115女将塾「愛される所作~菜の花色の会」21.JPG

「なんだ、羊羹か」などと言うなかれ。羊羹「令和の初春」の写真をよくご覧ください。青えんどう豆を甘く柔らかく炊いた鶯豆が潜んでいます。

200115女将塾「愛される所作~菜の花色の会」25.JPG

さあ、ここからが連想ゲームです。

「鶯豆」から「鶯」(異名「春告鳥」)が思い浮かびます。元号が令和になってから初めて迎える春、故に「令和の初春」と銘じたそうです。

羊羹はインスタ映えしない和菓子かもしれませんが、「鶯豆」を忍ばせた羊羹に「令和の初春」という菓銘を付けた和菓子職人のセンスから春の訪れをイメージすることができると思います。

(見るだけで楽しむのではなく)菓銘を聞いて楽しむ、和菓子。羊羹「令和の初春」に梅の干菓子を添えることにより一層「春の訪れ」のイメージが膨らみます。

なお、菓銘「令和の初春」は、お題菓子(御題菓子、勅題菓子とも)というジャンルに入る和菓子だそうです。お題菓子とは、毎年1月に皇居で開かれる歌会始のお題に因む意匠菓子のことです。令和2年のお題「望(のぞみ)」から笹屋さんが意匠を凝らし(販売用に)創作したのが菓銘「令和の初春」の煉羊羹だそうです。


和菓子の意匠―京だより

和菓子の意匠―京だより

  • 出版社/メーカー: 京都新聞企画事業
  • 発売日: 2020/04/19
  • メディア: 単行本



それでは、前記事 菓銘を聞いて「お茶を楽しむ」 -(2)菓銘を聞いて楽しむ「和菓子」- に写真を載せた京都・聖護院の甘楽花子さんのきんとん4種の甘楽花子さんのご主人・内藤豪剛さんによる菓銘の付け方をみてみましょう。

150207甘楽花子①、ナルシスの丘.JPG
~ 菓銘「ナルシスの丘」、2015年2月7日に甘楽花子さんでいただいた京菓子です。「ナルシスの丘」はスイス・レマン湖畔にある水仙が咲く丘です。「水仙」を意匠したきんとんですが、単純に菓銘を「水仙」とつけないところが京菓子職人のセンスだと思います。

170516和菓子の京都めぐり18、甘楽花子(五月女).JPG
~ 菓銘「五月女(さおとめ)」、2017年5月16日に甘楽花子さんでいただいた京菓子です。「夏も近づく八十八夜」で始まる文部省唱歌「茶摘み」をご存知の方なら、そぼろの色使いと菓銘「五月女」から、歌詞「あかねだすきに菅の笠」にある様に茜で染めたたすきをした女性が新茶を摘んでいる姿が浮かんでくるのではないでしょうか。

180716甘楽花子④、わだつみ.JPG
~ 菓銘「わだつみ」、2018年7月16日(月曜日/海の日)に、甘楽花子さんでいただいた京菓子です。「わだつみ」は、海の神のこと。マリンブルーに染めたそぼろから「海」を連想できますが、菓銘を「海」と付けないのが京菓子職人のセンスだと思います。

181101甘楽花子06、菓銘「はしり紅葉」(きんとん).JPG
~ 菓銘「はしり紅葉」、2018年11月1日に京都・聖護院の甘楽花子さんでいただいた京菓子です。

この京菓子の菓銘は読んで字のごとくですが、この日の甘楽花子さんには「はしり紅葉」という菓銘の京菓子が3種ありました。

181101甘楽花子05、菓銘「はしり紅葉」(羊羹).JPG
~ 菓銘「はしり紅葉」(羊羹)。

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~ 山を意匠した三角形の菓銘「はしり紅葉」は、あん好きにはたまらない京菓子でした。(下から上へ)村雨(漉し餡)・粒餡・栗餡・村雨(白餡※)。※黄色・オレンジ色・緑色の三色に染められた村雨(白餡)が使われていました。

餡玉にそぼろを付けた「きんとん」は、そぼろの色使いと菓銘の付け方で、季節に合わせて変身します。京菓子職人には、餡炊きなどの技術だけでなく、菓銘の付け方などのセンスが求められます。

♪ 「菓銘を聞いて」お茶を楽しむ -(4)菓銘を聞いて「お茶を楽しむ」- に続く。


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