厚生労働省は6月28日、
「牛海綿状脳症(BSE)全頭検査の見直し」と
題した文書を公表しました。

この文書を読むと、
BSE検査を行っている全国の75自治体において
7月1日から全頭検査を見直すこと、
すなわち検査対象月齢を48か月齢超に引き上げることが
確認されたそうです。

このように、
各自治体が自主的に行ってきたBSE全頭検査が
7月1日から全国一斉に廃止されましたが、
廃止の理由は自治体によって異なっています。

それでは具体的に、
「食の安全と安心」という視点で
BSE全頭検査の廃止の理由を見てみましょう(順不同)。


~ 食品安全委員会の季刊誌「食品安全vol.33」の表紙です。

まず、
千葉県の公式ウェブサイトに7月4日に掲載された
「BSE全頭検査の見直しについて」を参照すると、

①飼料規制により2002年2月以降に生まれた牛からはBSEの発生がない、特定危険部位を確実に除去しているという2点を踏まえた食品安全委員会の評価でBSE検査対象月齢を48ヶ月齢超に引き上げたとしても、人への健康影響は無視できるとされた  ②OIE(国際獣疫事務局)で「無視できるBSEリスクの国」(BSE清浄国)と認定された  ③大多数の消費者、生産者、流通業者等の理解が得られていると判断した 

となっています。

次に、
長野県の6月24日付のプレスリリース
「BSE(牛海綿状脳症)検査の検査対象月齢を48か月齢超に引き上げます」
を参照すると、

①食品安全委員会が、検査対象月齢を48か月齢超に引き上げても、人への健康影響は無視できると評価した  ②今日までのBSEスクリーニング検査結果から見て、飼料規制やSRMの除去などの対策が極めて有効に機能していると考えられる  ③リスクコミュニケーション、説明会を踏まえ、消費者、生産者、流通業者等から大きな反対もなく、検査の見直しが理解されたと判断した 

となっています。

京都市の公式ウェブサイト「京都市情報館」に載った
6月28日付の「京都市におけるBSE検査体制の見直しについて」を参照すると、

①食品安全委員会が「BSE検査対象月齢を48か月齢超に引き上げても健康被害は無視できる」と評価した  ②これを受けて厚生労働省が省令を改正し、検査対象月齢を48か月齢超に引き上げた
  ③国際獣疫事務局(OIE)が「無視できるBSEリスク」の国に認定した

となっています。

京都市は、
BSE検査体制の見直しを周知するための
チラシも作成しています。

食品安全委員会によるリスク評価
(食べても安全かどうか調べて、決める)、
厚生労働省によるリスク管理
(食べても安全なようにルールを決めて監視する)
を理由に挙げていない自治体もあります。

岐阜県が6月28日に県政記者クラブに配布した文書
「BSE全頭検査の見直しについて」を参照すると、

①OIE(国際獣疫事務局)で「無視できるBSEリスクの国」に承認された  ②全国の各自治体が一斉に全頭検査をやめることが判明した  ③風評被害が発生するおそれがないこと 

となっており、
安全よりも安心を重視しています。

ブランド牛「松阪牛」を擁する三重県も
安心を重視しています。

三重県が6月13日に津市で開催した
リスクコミュニケーションにおいて配布した資料
「三重県の考え方」を参照すると、

①三重県で、これまでにBSE感染牛の発生はない  ②と畜場で、特定部位を除去・焼却する等、十分なBSE対策が講じられている  ③全国の自治体の7月1日からの全頭検査廃止が想定される。三重県だけ独自に全頭検査を継続すると、三重県産の牛はBSEに感染していると誤解を招くおそれがある 

となっています。

BSE検査を実施している75自治体すべての
全頭検査廃止の理由を調べたわけではありませんが、
自治体によって廃止理由はいろいろです。

【参考】農林水産省の5月29日付プレスリリース「国際獣疫事務局 (OIE=Office International des Epizooties (World Organisation for Animal Health))による「無視できるBSEリスク」の国のステータス認定について」
農林水産省は平成24年9月、国際獣疫事務局(OIE)に最上位の「無視できるBSEリスク」の国の認定申請を行いました。その結果、平成25年2月に専門家(科学委員会)による審議が行われ、我が国が「無視できるBSEリスク」の要件を満たしている旨の評価案がまとめられました。フランス・パリで平成25年5月26日(日曜日)から5月31日(金曜日)の日程(現地時間)で開催中の第81回OIE総会において、5月28日(火曜日)、科学委員会の評価案のとおり、我が国を「無視できるBSEリスク」の国に認定することが決定されました。

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