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江戸時代の銘柄茶「川俣茶」(三重県松阪市飯高町・飯南町の櫛田川流域のお茶) [伊勢茶]

愛知県西尾市にある日本初の古書ミュージアム「西尾市岩瀬文庫」において2019年10月12日から2020年1月19日まで、西尾市岩瀬文庫企画展「茶 ~岩瀬文庫資料にみる茶のさまざま~」が開催されました(入場無料)。

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~ 西尾市岩瀬文庫企画展「茶 ~岩瀬文庫資料にみる茶のさまざま~」。

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~ 「日本山海名物図会」(全5巻、平瀬鉄斎・編、長谷川光信・画、1754年原刊、1797年求刊)。

この企画展における展示資料の一つである「日本山海名物図会」を企画展終了後に西尾市岩瀬文庫の閲覧室で閲覧すると、2巻の「茶 名物大概」の項に日本各地の24銘柄茶が載っていることをを知りました。


日本山海名物図会5巻 [2] (国立図書館コレクション)

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  • 出版社/メーカー: Kindleアーカイブ
  • 発売日: 2016/05/14
  • メディア: Kindle版


さて、「日本山海名物図会」に載っている24の銘柄茶の中に、「伊勢川俣」が載っています。

伊勢川俣(現在の松阪市飯高町から飯南町にかけての櫛田川流域)産のお茶「川俣茶(かばたちゃ)」については、松阪市生まれの日本古典研究家・本居宣長(1730~1801)が土産物として用いていたことがわかっています。

松阪市にある本居宣長記念館ウェブサイトに載っている「宣長探し~#022政所茶のこと~」を参照すると、次の記載があります。

宣長が吉野飛鳥の旅にもお茶を持参していたことは、『菅笠日記』に出てきます。また、和歌山での藩士への挨拶にもお土産はお茶でした。持って行ったお茶は「川上茶」、これは当時の松坂では、櫛田川上流のお茶、川俣茶をさしていました。 ※下線は wattana が引いた。

■出所:本居宣長記念館ウェブサイト「宣長探し~#022政所茶のこと~」

本居宣長記念館に確認すると、1794年(寛政6年)10月に本居宣長は御前講釈のために和歌山へ旅立ち、和歌山城の藩士たちへの挨拶回りの際に「川俣茶」をお土産として渡したそうです。

和歌山城へ到着してから4日後の10月18日に紀州藩勘定奉行の丹羽傳四郎、宇佐美長右衛門、高木平左衛門へ挨拶に行った時のことを本居宣長が自ら記録した資料2点が残っており、「寛政六年若山行日記」に「川俣茶」、「寛政六年若山行表向諸事扣」に「川上茶」の記載があり、本居宣長記念館によると、「宣長は同じお茶に対して、『川俣』と『川上』の区別なく名称を用いていたことがわかる」そうです。

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~ 本居宣長記念館(三重県松阪市殿町1536-7)。2020年4月14日撮影。

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「食品ロス削減」と食品表示 -(5)「期限表示」間違いは「食品ロス」につながる [食品表示]

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(4)食品の期限表示 からの続き


少し古い資料ですが、独立行政法人農林水産消費安全技術センターの広報誌「新・大きな目小さな目(2015年夏号)」に載っている「平成26年度における食品の自主回収状況について」を参照すると、回収理由は「表示不適切」が最も多く全体の47%を占めています。

「表示不適切」のうち「期限表示」の間違いが52%で最も多く、次いでアレルギー表示間違いが29%です。

「期限表示」の間違いでは、単純な印字ミスを挙げる例が多かったそうですが、「期限表示」は食品衛生上の問題につながるので、自主回収、自主回収の告知などの対応を取る必要があります(食品表示法が改正され「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」を行う場合、行政機関への届出が義務化され2021年6月1日に施行される)。


知ろう!減らそう!食品ロス(全3巻セット)

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  • 作者: 小林富雄
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さて、自主回収は経費と時間がかかります。と同時に、自主回収した食品のうち、期限表示前の食品はまだ食べることができるにもかかわらず廃棄処分されること、すなわち「食品ロス」となることが少なくないと思います。

したがい、「基本的な方針」には、「期限表示の欠落、誤表示等の防止」については食品製造業者の責務として明記されていませんが、食品製造業者においては、食品の包装容器への「期限表示」を記載する際には間違いがないように確認、そして再確認することが求められていると思います。

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示(全5記事) - 完


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「食品ロスの削減」と食品表示 -(4)食品の期限表示 [食品表示]

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(3)「食品ロスの削減の推進に関する」基本方針 からの続き

「基本的な方針」の「Ⅱ 食品ロスの削減の推進の内容に関する事項」の中に地方公共団体の果たす役割として「消費者に対し、賞味期限と消費期限の違い等、期限表示の正しい理解を促進する。」と明記されています。

それではここで、食品の「期限表示」について、復習してみましょう。

食品の「期限表示」には、消費期限と賞味期限があります。すべての加工食品(一部の食品を除く)には、食品の特性に応じて、消費期限または賞味期限のどちらかを表示しなければなりません。

■消費期限と賞味期限
消費期限:期限が過ぎたら食べない方がよい期限。年月日で表示。弁当、調理パン、そうざい、生菓子類、食肉、生めん類など品質(状態)が急速に劣化しやすい食品が対象。

賞味期限:おいしく食べることができる期限。この期限を過ぎても、すぐに食べられないということではない。3か月を超えるものは年月で表示し、3か月以内のものは年月日で表示する。スナック菓子、即席めん類、缶詰、牛乳、乳製品など品質の劣化が比較的穏やかな食品が対象。



食品ロスを防ぐ図説賞味期限の設定

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さて、消費期限と賞味期限は、保存方法と密接な関係にあります。

消費者庁が公表している「食品表示基準Q&A」(最終改正 令和2年3月27日消食表第90号)の「第2章 加工食品」に載っている質問(加工-11)の答を参照すると、消費期限と賞味期限は、定められた方法により保存することが前提だと明記されています。

質問(加工-11)食品を購入した後は、どのように保存すればいいのですか。
(答)消費期限又は賞味期限は、定められた方法により保存することを前提としていますので、表示されている保存方法に従って保存してください。食品を開封した場合は消費期限又は賞味期限まで食品の安全性や品質の保持が担保されるものではありませんので、速やかに消費する必要があります(総則-22、総則-23参照)。 なお、保存方法の表示がない場合は、常温での保存が可能です。 ※下線は wattana が引いた。


ところが、「期限表示」と保存方法はセットだということを理解していない消費者が少なくないためなのか、質問(加工-34)の答を見ると、消費者庁は消費者への適切な情報提供を奨励しています。

質問(加工-34)消費期限又は賞味期限の表示に加え、期限表示が未開封の状態を前提としていることを併せて表示することはできますか。
(答)期限表示は、開封前の状態で定められた保存方法により保存した場合の期限として表示されており、開封後は常温で保存できるものであっても環境中にある微生物により腐敗が始まります。このため、期限表示が未開封の状態を前提としている旨を併せて表示することは、消費者への情報提供の観点から適切であると考えます。 ※下線は wattana が引いた。


♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(5)「期限表示」間違いは「食品ロス」につながる へ続く。


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「食品ロスの削減」と食品表示 -(3)「食品ロスの削減の推進に関する」基本方針 [食品表示]

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(2)「食品ロス」をめぐる現状 からの続き

「食品ロスの削減推進法」の第11条(基本方針)を参照すると、「政府は、食品ロスの削減に関する施策の総合的な推進を図るため、食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針を定めなければならない。」となっています。

この第11条の規定に基づき2020年3月31日、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(以下、「基本的な方針」)が閣議決定されました。「基本的な方針」を参照すると、この方針の位置付けが次の通り明記されています。

■「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」の位置付け■
(略)本基本方針は、食品ロス削減推進法第11条の規定に基づき、食品ロスの削減の推進の意義及び基本的な方向、推進の内容、その他食品ロスの削減の推進に関する重要事項を定めるものである。

都道府県は、本基本方針を踏まえ、都道府県食品ロス削減推進計画を定めるよう努めなければならないものとされており、また、市町村は、本基本方針及び都道府県食品ロス削減推進計画を踏まえ、市町村食品ロス削減推進計画を定めるよう努めなければならないものとされている。

また、本基本方針は、国や地方公共団体の施策の指針となるだけでなく、事業者、消費者等の取組の指針ともなるものである。
 
■出所:「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」1ページ


食べ物をすてない工夫

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さて、「基本的な方針」の「Ⅱ 食品ロスの削減の推進の内容に関する事項」を参照すると、消費者、農林漁業者・食品関連事業者、国・地方公共団体など関係者に求められる役割と行動が明記されています。

次は、関係者に求められる役割と行動の中から食品表示に関連した項目を抜き出したものです。

■関係者に求められる役割と行動(食品表示に関連した項目
【消費者】
買物の際:事前に家にある食材をチェックし、期限表示を理解の上、使用時期を考慮し(手前取り、見切り品等の活用)、使い切れる分だけ購入する。

食品の保存の際:賞味期限を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではないため、それぞれの食品が食べられるかどうかについては、個別に判断を行う。

【食品製造業者】
食品の製造方法の見直しや保存に資する容器包装の工夫等により、賞味期限の延長に取り組む(略)。また、年月表示化など賞味期限表示の大括り化に取り組む。

【食品卸売・小売業者】
賞味期限、消費期限に近い食品から購入するように促し、売り切るための取組(値引き・ポイント付与等)を行う。

【マスコミ、消費者団体、NPO等】
前記の求められる役割と行動を実践する消費者や事業者が増えるよう、積極的な普及啓発活動等を行う。

【国・地方公共団体】
前記の求められる役割と行動を実践する消費者や事業者が増えるよう、後記2に掲げる施策を推進する。(略)

■出所:「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」4~7ページ

「食品ロスの削減」にご興味のある方は、消費者庁ウェブサイトに特設されている「〔食品ロス削減〕食べもののムダをなくそうプロジェクト」をご覧ください。 → こちら

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(4)食品の「期限表示」 へ続く


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「食品ロスの削減」と食品表示 -(2)「食品ロス」をめぐる現状 [食品表示]

♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(1)「食品ロスの削減に関する法律」、2019年10月1日施行 からの続き


消費者庁ウェブサイトの「〔食品ロス削減〕食べもののムダをなくそうプロジェクト」ページに載っている「食品ロス削減関係参考資料(2020年3月31日版)」を参照すると、「食品ロス」をめぐる現状は次の通りです。

■我が国の食品ロスの現状
・食品ロス量は年間643万トン(2016年度推計)
・毎日大型(10トン)トラック約1,760台分を廃棄
・年間1人当たりの食品ロス量は51kg
 ≒ 年間1人当たりのコメの消費量(約54kg)に相当

■食品ロスの発生要因
・我が国の食品ロスは643万トン
・食品ロスのうち事業系由来は352万トン、家庭系由来は291万トンであり、食品ロス削減には、事業者、家庭双方の取組が必要。

さて、農林水産省は2020年4月14日、「食品ロス量(2017年度推計値)」を公表しました。この推計値を見ると、2016年度の食品ロス推計値643万トンから31万トン減少し、2017年度は612万トンだったそうです。

2016年度⇒2017年度
食品ロス643万トン ⇒ 612万トン (▲31万トン、▲5%)
・事業系食品ロス 352万トン ⇒ 328万トン(▲24万トン、▲7%)
・家庭系食品ロス 291万トン ⇒ 284万トン (▲7万トン、▲2%)


食品ロスを減らすには

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♪ 「食品ロスの削減」と食品表示 -(3)「食品ロスの削減の推進に関する」基本方針 へ続く


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