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「栗粉餅」、栗菓子の原点 [甘いもの(和菓子・スイーツ・パン)]

栗と砂糖で作る素朴なお菓子「栗きんとん」は、岐阜県中津川市、恵那市および加茂郡八百津町の名産品です。

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~ 元祖栗金飩「緑屋老舗」の「栗きんとん」、2017年9月11日購入。

栗を使った和菓子といえば、「栗きんとん」のほかに、栗羊羹、栗まんじゅうなどがありますが、「栗粉餅」とよばれる和菓子があります。

中津川市、岐阜市、名古屋市などにある和菓子屋で「栗粉餅」は製造販売されていますが、全国的な知名度は低いようです。

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~ 「松河屋老舗」本店で2017年9月16日に購入した「栗粉餅」。

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虎屋文庫の中山圭子さんの著書「和菓子ものがたり」(朝日文庫、2001年1月1日発行)の「栗菓子ことはじめ」を参照すると、「栗粉餅」は栗菓子の原点だそうです。

この頃になると、栗菓子の原点ともいえそうな栗の加工品が文献にも登場します。その名は栗粉餅。栗羊羹、栗きんとんなどが江戸時代後期に作られる前に、栗粉餅なる栗製品があったことは意外に知られていません。さて、栗粉餅とはどんなお菓子だったのでしょうか。 栗粉餅は、「松屋久政茶日記」の天正6(1578)年9月18日の条に「クリ粉ノモチ」と見える記録が古く、文字どおり、栗の粉をまぶした餅のことです。・・・中山圭子・著「和菓子ものがたり」160~161ページより引用







さて、虎屋文庫による情報が続きますが、虎屋文庫・編著「和菓子を愛した人たち」(山川出版社、2017年6月発行)の「近衛家煕と栗粉餅-さすがの者共なり」を参照すると、「栗粉餅」に関する興味深いエピソードが載っています。

(略)享保16年10月には、虎屋にかかわるエピソードがあります。家煕が嵯峨(京都府)で朝早く栗粉餅を使用するため、晩のうちに納めるよう注文したところ、虎屋と亀屋は品質が保てないと判断したようで辞退しました。栗粉餅は室町時代から日記や茶会記に見える菓子で、餅に栗の粉をまぶした素朴なものと考えられます。菓子屋としては、栗の粉の傷みが早いのを心配したのでしょうか。それとも、あまり早く届けてしまうと、餅が固くなるということだったかもしれません。辞退の言を受けてから近衛家から、それでは栗の粉は重箱に入れ、餅とは別にするように、という新たな指示が出され、夜半過ぎに餅だけが届けられました。栗の粉がいつ届けられたかは記載がなく、実際の状況は不明ですが、当初の条件ではおいしく召し上がっていただけないという判断があったことは間違いがありません。二店の対応について「槐記」には“さすがの者共なり。何と偽っても商品を納めるのが商いの習いだが、それを断るのはよくよくのこと。些細なことかもしれないが、ほめるべきである”と記されています。(略)・・・「和菓子を愛した人たち」220~221ページより引用。


「栗の粉の傷みが早い」のは、現在の「栗粉餅」にも言えることです。栗の保水力の弱さを補うために砂糖を使いますが、砂糖の量が多すぎると、日持ちは長くなっても肝心の栗の風味が砂糖に負けてしまいます。消費期限を1日でも長くするためにトレハロースなどを添加する和菓子屋もあります。

また、「栗粉餅」のことを「栗きんとんをアレンジした人気商品」などと紹介する和菓子店がありますが、室町時代に既にあった「栗粉餅」を100年ほどの歴史しかない「栗きんとん」のアレンジ商品という本末転倒な紹介はとても残念です。






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